速度が大切な理由と、創作に必要な無心の時間について
Webアプリ開発でも、創作でも同じことだけど、速度って大切だよね。速度があれば量をこなせる。量をこなせば、質もやがて追いついてくる。
ぼくはどちらかといえば、速度のない方だ。だらだらと考えて、色々と検討した末に残り時間が少なくなっている——そんな感じで日々の開発であったり、趣味のことをこなしていたりする。これを書いている今だって、制作中の個人開発プロジェクトに、当初予定になかった新しい技術を試してみて時間を無駄にしたところだ。
まあ、その無駄がぼくの知識の幅を広げたという側面もあるかもしれない。でもどうせ薄っぺらな知識だ。使い込まないと洗練されないし、そのためにはやっぱり、ともかく、何をおいても速度が必要。
仕事でも使ってるテクニックとして、ぼくは自分の速度が落ちてきたら、簡単なことでもいいからキーボードを叩いて何か文章を書くようにしている。文章を書けば頭の中のぐちゃぐちゃなメモリが整理されて、メモリに空きが出る。それにキーボードを叩いている感覚が、包丁で何か野菜でも切っているときみたいに、テンポよく次の行動を誘発してくれる。
コツはあまり考えないことだ。考えるのは悪。考えたってさほど良いものは出てこない。思考は指先に宿るものだと思って、ただ打鍵していたい。小説を書くときの楽しさって、これだ。筆が乗っている時は、特に何も考えず、紙面の出来事を自動筆記していけばいい。——逆に、考え出すと苦痛だ。考えないといけないのは無理があるときだ。
無心になる時間って、そういえばパティシエ時代と比べて格段に減った気がする。パティシエの仕事は五感だ。焼成時には嗅覚を使ってるし、生地を泡立てる時はよく目を凝らしている。パイ生地を伸ばすときは腕に伝わる生地の弾力を感じている——つまり、デスクワークにありがちな頭の中のごく狭い一部分だけを酷使するような仕事じゃない。
覚えているのは仕事おわりの爽快感だ。パティシエ時代は仕事終わりのテンションの上がり方が半端ではなかった。ずっと全身で集中して、それが解放されたときの高揚感のまま帰路についた。ああいう仕事の仕方をしたい。